今回は「バックスピンする球体に働く負のマグナスカ」をご紹介します。
この論文では
- フォーシームとツーシームの揚力の違い
がわかります。
概要
硬式野球ボールと真球(縫い目のない滑らかな表面の球)で、バックスピンをかけて投げた時にかかる力や軌道の違いを測定します。
硬式野球ボールについては、4シームの時と2シームの時それぞれについて調べました。
また、人間が投球するとされる条件以外にボールの速度や回転数などの条件を変えて調べました。
結論
結論は下記です。
- フォーシームとツーシームによる球質の違いはない
- フォーシームとツーシームの投げ分けは、回転数・回転軸・球速を変えることで実現している
試験結果
試験結果です。

上の図の赤丸部分がプロ野球投手が投げるストレートに近い状況です。
この状況下において、ホップする力(CLZ)はフォーシームとツーシームで違いが少ないことがわかります。
また、空気抵抗(CD)も違いがありません。
その為、フォーシームとツーシームの違いは、投手が回転軸や回転数、球速を変化させることで違いを出しているという結論となっています。
しかし、図を見るとCLZに関してはツーシームの方が全体的に低く出ているように感じます。
その為、私はこれを見て「違いはありそうだ」と感じました。
また、この研究は純粋なバックスピンでの計測なので、バックスピンから回転軸がズレた時にはもっと影響があるかもしれません。
むしろ、投手が投げるボールはバックスピンから回転軸がズレているのが標準なので、その時のデータが必要でしょう。
*2020年からMLBではホークアイという変化量と回転軸を計測するシステムを導入し、縫い目による影響が可視化されました。詳しくは下記へ
実験方法
試験方法をご紹介します。
測定装置の配置
ピッチングマシンを用いて、透明なボードに向かってボールを投げます。
ボードから3.5mおきにスリットライトを置きました。
スリットライトの真横にカメラを置くことによって、ボールの通過する時間から速度を求めることができます。
また、ボールの軌道の撮影には、1秒間に1901フレーム撮影できる高速度ビデオカメラを使いました。
試験に使うボール
硬式野球ボールは日本プロ野球の公式球で直径7.20cm、重さ145g、縫い目の高さ7.3mmです。
一方、滑らかな表面の真球は直径7.16cm、重さ134.9gで、硬式野球ボールとほぼ同じ大きさとなっています。
「バックスピンする球体に働く負のマグナスカ 飛翔実験による測定」のまとめ
もう一度まとめると
- フォーシームとツーシームによる球質の違いはない
- フォーシームとツーシームの投げ分けは、回転数・回転軸・球速を変えることで実現している
です。
しかし、個人的には実験結果を見ると、4シームと2シームの違いはありそうに感じました。
また、実験では純粋なバックスピンです。
実際の投手の投球では純粋なバックスピンになることはまずありませんので、参考程度に見ておいた方が良さそうです。
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