MLBでは2019年まで、トラックマンによってボールの変化量を計測し、そこから回転軸を推測(計算)していました。
その為、実際の回転軸と違っているケースも報告されていました。
The following is the same FB, measured on both Rapsodo & Trackman.
— Ben Brewster (@TreadAthletics) February 7, 2021
They have comparable release height, spin and velocity.
Rapsodo read this pitch as a bad sinker
Trackman read this pitch as an elite demon sinker
Neither was a misread.
Who can answer what happened? pic.twitter.com/nvG1Z8iviH
上のツイートは、トラックマンとラプソードの計測値を比較して結果が違う事を指摘しています。
それぞれの計測機器のアプローチは下記のようになっています。
- トラックマン:変化量を計測し、回転軸を計算する
- ラプソード:回転軸を計測し、変化量を計算する
このアプローチの違いで、両者に差が出る場合があるようです。
Correct. Rapsodo measures spin axis and infers direction of movement. Trackman effectively measures direction of movement and infers spin axis. Both inferences assume pure Magnus and are therefore wrong if other forces are important.
— Alan Nathan (@pobguy) May 24, 2020
その為、変化量と回転軸を正確に知るには、両方を計測する必要があります。
それを可能にしたのが、2020年からMLBに導入されたホークアイ(Hawk-Eye)という計測システムです。
ホークアイのデータを見てみる
ホークアイでどんなデータが計測されているのか見てみましょう。
データはMLBマニアが良く使うbaseballsavantから取得できます。
トップ → Leaderboards → Spin Direction

チーム、球種、利き手、投球数、投手視点・打者視点、といった条件で絞り込みが出来ます。
表示されたデータは各投手の
- Pitch Type:球種
- Active Spin%:回転効率
- Total Movement(in.):縦横トータルの変化量(インチ)
- Sipn-Based:ホークアイにより計測された回転軸から想定される変化方向(見た目の回転軸との直角方向)
- Observed:ホークアイ?トラックマン?により計測された実際の変化方向
- Deviation:Sipn-BasedとObservedの差
が見れます。
Sipn-BasedやObservedは下記図のように時計の短針で方向を表しています。

矢印の方向が真上なら12時、見た目の回転軸は地面と水平、という感じで読み取ります。
ただし、「見た目」の回転軸なので、そこは注意が必要です。
また、このページでは15分単位(角度で言うと7.5°)なので、アバウトでの表示となっています。
ホークアイのより詳細なデータ
より詳細なデータを見たい場合は、表の上の「Download CSV」からデータを取得しましょう。
さらに細かいデータが入手できます。
間違いがあるかもしれませんが、各項目について私の解釈をメモしておきます。
- alan_active_spin_pct:トラックマンデータから計算した回転効率
- active_spin:ホークアイで計測した回転効率
- hawkeye_measured:ホークアイにより計測した回転軸から想定される変化方向(12時=180°=真上)*絞り込みが投手視点だと打者視点のデータになる?
- movement_inferred:ホークアイ?トラックマン?により計測した変化方向(12時=180°=真上)*絞り込みが投手視点だと打者視点のデータになる?
- hawkeye_measured_clock_minutes:hawkeye_measuredを分表示した数値(15分きざみ)
- movement_inferred_clock_minutes:movement_inferredを分表示した数値(15分きざみ)
- diff_measured_inferred:movement_inferredとhawkeye_measuredの差
ちなみにダルビッシュのデータは下記のようになっていました。

例として、FF=4シームを見てみます。
トラックマンによる回転効率は86.7%となっていますが、ホークアイによる計測では88.8%となっています。
ホークアイによって計測された見た目の回転軸から想定される変化方向は154.05°です。
打者視点での数値なので、真上に対して約26°ほど反時計回りに傾いているという事になります。
実際の変化方向は160.22°なので、真上に対して反時計回りに約20°の傾きだったことになります。
両者の差は6°ほどですが、この差がdiff_measured_inferredの欄に表示されています。
以上のデータから、計測された回転軸から想定される変化量よりも、実際の変化方向はより真上方向に近いことがわかります。
これが縫い目による影響のようです。
4シームと2シームの違い
先ほどのダルビッシュの4シームと2シーム(分類はシンカー)を比較すると、より縫い目による影響がわかります。

両球種を比較すると、回転数こそ150rpmほど違いはありますが、回転効率や回転軸にそこまで大きな差はありません。(球速差は1.4km/hほど)
しかし、変化方向は両球種間で32°ほどの違いが出ています。
これにより、4シームはより縦方向に、2シームはより横方向に変化していることがわかります。
これはまさに縫い目による違いといっていいでしょう。
おそらく、この2球種をトラックマンのように変化量の違いから回転軸を算出した場合、回転軸に大きな違いが出るでしょう。
また、ラプソード単体で計測した場合は、回転軸がほぼ同じなので、変化量に違いが出ないと思われます。
*両機器を持っていないのでわかりませんが、球種を指定することで誤差が少なくなるように工夫されているかもしれません。
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