投手が投げるボールの球質(変化量)を決める要因で大きいのは、回転数、回転軸、縫い目です。
その中でも回転軸は、「回転効率(spin efficiency)」と「回転方向(spin direction)」という2つの指標で表されるケースが多くなっています。
その為、この考え方について理解を深めることが、球質を改善していく上で重要になっています。
今回は回転方向(spin direction)について解説します。
回転方向(spin direction)とは?
回転方向とは
ボールが回転する方向
です。
投手方向または捕手方向から見た場合に、どういった角度でボールが回転しているかを表しています。
「見た目の回転軸の傾き」と思って頂いて問題ありません。
上の図が回転方向を表した図です。
捕手側から見たボールの回転を表現しており、白が回転軸です。
回転はバックスピン方向となっており、右投手が投げる2シームの回転をイメージして頂くと良いかと思います。
回転軸に対して90°傾いた矢印の方向を「回転方向」と言い、時計の針の短針で方向(角度)を表現します。
例えば、上の図であれば「11時の方向」が回転方向という事になります。
完全なバックスピンの場合は12時で、完全なトップスピンの場合は、12時とは逆の6時となります。
この回転方向はボールが変化する方向と相関があります。
つまり、回転方向がわかれば変化する方向がある程度わかるという事になります。
*上のグラフはホークアイのデータで、12時の方向が180°、6時の方向が0°
その為、ラプソードなどの計測機器でもこの回転方向が表示されています。
ラプソードの場合は先ほどの図とは違って投手目線で見た場合の表示となっています。
ちなみに、0時から12時が360°に対応しているので、1時間で30°、1分が0.5°ということになります。
ラプソードの場合、例えば右投手で0時20分だった場合は、真上方向から10°時計回りに傾いた位置が回転方向という意味になります。
回転方向のMLB平均
各球種における回転方向のMLB選手の平均は下記になります。
*数値は投手目線
*左右で数値が違うので右投手のみの平均
球種 | 回転方向 (°) |
変化方向 (°) |
4シーム | 212.1 | 206.8 |
2シーム | 218.9 | 239.7 |
スライダー | 115.4 | 98.0 |
カッター | 176.0 | 151.2 |
カーブ | 53.9 | 50.8 |
チェンジアップ | 232.5 | 248.5 |
4シームを見てみると、回転方向は212.1°なので、完全なバックスピンに対して32.1°ほど傾いていることがわかります。
変化方向は206.8°なので、回転方向よりも上向きの力が掛かっていることがわかります。
対して2シームですが、回転方向は218.9°なので、完全なバックスピンに対して38.9°ほど傾いていることがわかります。
変化方向は239.7°で回転方向よりも傾きが大きくなっており、上向きの力が少なく、シュート変化する力が大きいことがわかります。
このように、回転方向と変化方向には相関があるものの、球種間でやや傾向が異なっています。
この回転方向と変化方向の差は「縫い目の影響」と思われます。
回転方向と変化方向の差は縫い目の影響
下の図は2020年のダルビッシュの変化量をマップ化した図です。
4シームと2シームの変化量の差は明らかです。
しかし、下記のようにボールの回転情報は下記のように大きな差はありません。
4シーム | 2シーム | |
球速(mph) | 95.9 | 95.0 |
回転数(rpm) | 2594 | 2493 |
回転効率(%) | 88.9 | 89.8 |
回転方向(°) | 205.9 | 207.1 |
変化方向(°) | 199.8 | 231.7 |
つまり、縫い目の位置を変えるだけで、これだけの変化差を生み出していることです。
その為、回転軸だけでなく、縫い目の位置を調整することも、球質を改善していく上では重要なことだといえるでしょう。
ただし、冒頭で書いたように変化量を決めるのは回転方向以外にも回転効率と縫い目があります。
下記の記事では回転効率について解説していますので、ご参照頂ければ幸いです。
下記の記事では縫い目(SSW)について紹介していますので、ご参照頂けますと幸いです。
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