プロ野球投手のボールスピンの特徴
今回紹介するのは「 プロ野球投手のボールスピンの特徴」です。
この論文では
プロ野球投手とアマチュア投手の球質の違い
がわかります。
概要
この研究は、プロ野球投手の投げた球にどういう特徴があるかを明らかにするのが目的です。
プロ野球投手とアマチュア投手の球速・回転速度や回転軸の角度といったデータを測定し、比較することで違いを分析しています。
結論
研究の結果、次の結論が出されました。
- 球速や回転数はレベルが上がるほど高くなるが、大学生、社会人、プロ野球の間で大きな差が見られなかった
- 進行方向に対して垂直方向の回転軸成分が、プロの方が目立って高い値だった
- その為、プロが投球したボールの方がホップ量が大きく、打者を打ち取る能力が高いと言える
球速や回転速度及びボールの回転角度については、小中学生、高校生、大学、社会人、プロと競技レベルが上がるほど高くなりましたが、大学生、社会人、プロ野球の間で大きな差は見られませんでした。
しかし、ボールの進行方向に対して垂直方向の回転速度は、プロの方が目立って高い値となっています。
つまりプロ野球選手はバックスピンに近い回転となっているということです。
打者が想定した軌道よりもホップ量が大きいことで、打ち損じやすいということが言えます。
試験結果
下記が実際の試験データです。
球速 (km/h) |
回転数 (rpm) |
回転軸角度 (°) |
垂直方向の 回転速度 |
|
小中学生 | 97.2 | 1,434 | 58.9 | 19.8 |
高校生 | 119.9 | 1,782 | 62.8 | 25.9 |
大学生 | 128.2 | 1,872 | 65.5 | 27.7 |
社会人 | 130.7 | 1,818 | 67.7 | 27.3 |
プロ | 135.4 | 1,974 | 70.3 | 30.5 |
球速・回転数についての測定結果
球速は、競技レベルが上がっていくほど、高くなっていますが、プロと社会人の間で大きな差は見られませんでした。
回転数も、プロと大学生の間で大きな差は見られていません。
回転軸角度・垂直方向の回転速度についての結果
回転数については、プロ、社会人、大学の間で大きな差は見られませんでしたが、競技レベルが上がるにつれて90°に近づくことが分かりました。
バックスピンに近い球を投げられているということです。
また、垂直方向の回転速度はプロが明らかに高く、進行方向に対して垂直に働く揚力も大きくなりました。
別の研究では、揚力の大きいボールが芯を外すボールの特徴となる事が明らかになっており、打ち取りやすいボールをプロが投げていることが言えそうです。
試験方法
最後に試験方法を紹介しておきます。
実験の対象者及び方法
今回の測定を行った選手(投手)のうち、小中学生は70人で、高校生は50人、大学生は1部リーグに所属する大学の149人、社会人27人、プロ26人でした。
測定に参加する選手及び18歳以下の選手の保護者に対して、実験の目的・方法を説明し、同意を得ています。
ウォーミングアップ後に、小学生は16.00m、それ以外は18.44m先のホームベースにある的をめがけて、6~10球程度ストレートを投げさせました。
ボールは、高校生以上は公認硬式球(重量145g、直径73.8mm)、中学生はB号軟式球(重量135g、直径70mm)、小学生ははC号軟式球(重量128g、直径68mm)を使います。
球速・回転速度及び回転軸角度の測定方法
ボール表面上に4個点を描き、専用カメラ12台でボールの動きを記録し、ボールの動きから球速、回転速度及び回転軸角度、垂直方向の回転速度の計算を行いました。
回転軸角度は、ボールの進行方向(ピッチングプレートからホームベースの向き)とボールの回転方向のなす角を指します。
まとめ
もう一度まとめると
- 球速や回転数はレベルが上がるほど高くなるが、大学生、社会人、プロ野球の間で大きな差が見られなかった
- 進行方向に対して垂直方向の回転軸成分が、プロの方が目立って高い値だった
- その為、プロが投球したボールの方がホップ量が大きく、打者を打ち取る能力が高いと言える
です。
プロの投球は回転軸が進行方向と垂直に近く、ホップ量が多い為、打ち取りやすい球を投げていることがわかりました。
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