スイーパーとは横変化が大きく沈まないスライダー

スイーパー 解説 解説
スイーパー 解説

スイーパーとは「横変化量が大きく沈まないスライダー」の事で、SSWを上手く利用することで投げることが出来ます。

MLBではスイーパーという名前が付けられ、ひとつの変化球として認められています。

日本でも大谷翔平が投げていることでご存じの方も多いでしょう。

本記事ではそんなスイーパーを解説していきます。

スイーパーの映像

まずはスイーパーの映像をご紹介します。

*Rob Friedman氏はMLBと契約してMLB中継の動画を投稿しているので違法ではありません。

横に大きく滑るように変化し、落差が少ない事がわかります。

スイーパーの原理

スパコンによる解明で原理はわかると思います。

ここでは実際のデータを使いながら解説してきます。

スライダーとスイーパーの比較

まずは下記の表をご覧ください。

ジョーダン・ヒックスのスライダーとスイーパーのデータを比較したものです。

球種 球速
(km/h)
回転数
(rmp)
回転方向
(時:分)
回転効率
(%)
横変化
(cm)
縦変化
(cm)
スライダー 139.9 2,482 8:23 41.7 12.9 -9.5
スイーパー 139.5 2,575 7:48 44.4 33.9 -2.9

*回転方向・回転効率がわからない方は青字タップで解説記事に遷移します。
*データはbaseballsavantから

球速・回転数・回転方向・回転効率の回転データに大きな違いはありません。

しかし、変化量が大きく違っている事がわかります。

スイーパーの方が横変化が大きく、縦変化もマイナス側に少ないので沈みにくくなっています。

回転軸的にはスイーパーの方がトップスピン成分が大きい(6時方向に近い)ので、横変化は少なく、縦変化はマイナスに大きくなるはずです。

変化量が逆になっているのは回転情報だけでは説明できません。

スイーパーの縫い目の位置

そこで重要なのが縫い目の位置です。

縫い目の位置は下記のツイートの左側の図(Mollweide Projection)で違いがわかります。

1投球で最大4個所にプロットされるので、非常にわかりにくくなっています。

これを簡略化してわかりやすくすると下記になります。

左のモルワイデ図法だとわかりにくいと思いますので、右側に実際のボールに回転軸の位置を表示しておきました。

この2つの縫い目の位置と回転軸データを使って両球種の3Dモデルで比較をしてみます。

左がスライダー、右がスイーパーです。

回転軸にはそこまでの大きな違いはありませんが、縫い目の通り方が違っています。

縫い目のズレだけに注目できるように、縫い目の位置は変えずに、回転軸だけ共通(バックスピン)にしてみます。

左がスライダー、右がスイーパーです。

スライダーは4シーム寄りでスイーパーは1シーム寄りの縫い目位置になっています。

この縫い目の位置と先ほどの回転軸を組み合させることによって、ヒックスは2球種の違いを生み出しています。

以上から、縫い目の位置の違いで大きく変化量が変わる事がわかったと思います。

縫い目の影響

もう少し深堀します。

先ほどのヒックスの両球種の変化量を「回転による変化量」と「縫い目による変化量」で分解してみます。

球種 MG SSW TOTAL
横変化 縦変化 横変化 縦変化 横変化 縦変化
スライダー 20.0 -10.7 -7.1 1.2 12.9 -9.5
スイーパー 21.3 -14.3 10.6 11.4 33.9 -2.9

MG(マグヌス力)とTOTALはMLBデータから算出し、TOTALからMGを引き算してSSW(シームシフトウェイク)を計算しています。

つまり

  • MG + SSW = TOTAL

という関係になります。

スライダーもスイーパーもMGの縦変化はマイナスの沈む方向に出ています。

しかも、スイーパーの方がマイナスが4cmほど大きいです。

SSWを見ると、スイーパーは大きくホップする力が発生。

トータルで-2.9となり、0に近い縦変化なので沈みにくい軌道をしている事がわかります。

横変化量は対照的です。

回転による横変化は両者に大きな違いはありません。

しかしSSWを見ると、スイーパーは+10cmほど横変化を後押し、スライダーは逆に7.1cmほど横変化するのを邪魔しています。

それにより、スライダーとスイーパーとでは横変化量に20cmほどの差が出ている事がわかります。

以上から、スイーパーが縫い目の影響を上手く利用した変化球であることがわかったと思います。

投げ方

スイーパーを投げたい方も多いと思います。

参考になりそうなデータや映像を置いておきます。

データの目安

基本的な目安は下記です。

回転方向 回転効率 緯度 経度
右投手 8時~9時 30以上 -45~45 60~120
左投手 3時~4時 30以上 -45~45 60~120

緯度と経度は縫い目位置の事で、詳細はこちらをご参照ください。

私が調べた限り、縫い目の位置は

  • 緯度:-45°~-25°前後
  • 経度:90°前後

の1シームと2シームの中間あたりの縫い目の位置が多くなっていました。

しかし、これはあくまでも目安です。

変化の仕方は回転軸の位置と縫い目位置の組み合わせで決まりますので、上記の範囲に入っていてもSSWが大きくなるわけではありません。

目安を参考に、自身の回転軸に合わせた最適な縫い目位置を探していく必要があります。

簡単なのは目標とする選手の回転軸と縫い目位置を真似する事です。

リリース

回転方向はややトップスピン成分が入った回転です。

その為、ボールの奥側を人差し指で真横にシームをひっかくようなイメージがあると良いです。

ただ、リリースの仕方でそれが難しい選手もいます。

その選手は、中指でシームをひっかくようなイメージでリリースすると良いでしょう。

中指でリリースすると、トップスピン成分が大きくなりすぎてしまう傾向がありますので、よりサイドスピンをかけるイメージで投げると良いと思います。

グリップ

縫い目の位置は1シームと2シームの中間あたりの縫い目の位置がSSWが最大化されやすいです。

その為、グリップは2シーム両指グリップが主流です。

グリップは後に紹介する参考動画を見て頂くとイメージしやすいです。

参考動画

参考になりそうな実際のリリース映像を貼っておきます。

最初の3名は主流である両指の2シームグリップです。

大谷翔平:2シーム両指グリップ

・マイケルキング:2シーム両指グリップ

・バウアー:2シーム両指グリップ

下記は2シーム片指グリップで、中指をシームに掛けています。

・ブライアン・ウー:2シーム片指グリップ

計測と映像での確認

ただし、グリップを意識しても、同様の縫い目の通り方をするわけではありません。

なので投げたボールがどのような縫い目の位置になっているかを確認する必要があります。

縫い目の位置を計測できるラプソード3.0があれば良いですが、ラプソード2.0しかない方も多いと思います。

その場合、スロー映像でのリリース確認は必須ですが、スロー映像が撮影できるカメラは比較的安価で導入できます。

詳しくは下記の記事をご参照ください。

投手リリースのスーパースロー撮影におすすめのハイスピードカメラ
投手の投球リリースのスーパースロー撮影におすすめのハイスピードカメラをご紹介しています。おすすめはgalaxy S20、RX10M3 or RX10M4、ラプソードINSIGHT、Edgertronic。

まとめ

以上、スイーパーの解説でした。

「横変化量が大きく沈まないスライダー」の事で、MLBでは1つの変化球として認知されています。

ポイントとなっているのは縫い目の位置で、SSWを上手く利用することで実現できる変化球です。

その為、難易度は高いですが、高レベルなボールなだけに投手としては習得したいボールの一つです。

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