ドラフトグレードの使い方と注意点

ツール紹介

ドラフトグレード」を公開しました。閲覧はリンクから。PCでの閲覧推奨です。

ドラフトグレードでは私がこれまで計測してきたドラフト指名済選手の球質データと評価を公開しています。

本記事は下記の目次内容となっています。目次から該当箇所へ飛べます。

ドラフトグレードについて

データについて

データは私自身が独自に収集しています。

下記のようなスロー映像から、回転数・回転軸・縫い目の位置などを計測。

MLBデータから得られたの変化量推定アルゴリズムと打撃結果予測アルゴリズムから、得点期待値を積み上げ、その値を元に球質を偏差値化し、球質レベルの数値化を行っています。

なぜMLBなのかというと、NPBがデータを公開していないからです。

NPBデータから得られた変化量予測アルゴリズムと打撃結果予測アルゴリズムを使えれば、評価精度はより上がると思います。

公開範囲

データはあくまでもドラフト指名済の選手のみとします。

理由の1つ目は「NPB球団への配慮」です。

私と同様にバックネット裏からスロー撮影を行い球質分析を行っている球団があります。

2つ目は「トラッキングデータを販売をしている連盟への配慮」です。

東京六大学野球連盟と東都大学野球連盟はNPB球団へトラックマンデータを販売しているようです。

各所に配慮して、あくまでも動画とデータの公開はドラフト指名済選手のみとします。

ただ、たまに動画が欲しいという問い合わせがあります。

選手ご自身や所属チームへは共有しますので、その際はお問合せ下さい。

公開する理由

気づかれている方もいるかもしれませんが、本サイトも本ツールも広告が一切ありません。

サイトを公開しているだけで維持費はかかりますし、作業時間などもかかるので、損しかありません。

ではなぜ公開するのか?

先ほども書きましたがNPBはトラックマンやホークアイのデータを一般に公開していません。

MLBは全てではありませんが、トラックマンやホークアイのデータを一般に公開しています。

MLBは「データの民主化」を目指し、NPBは「データの権利化」を目指しているという事です。

これには様々な意見があると思います。

私は「データの民主化」が競技者・指導者・ファンのデータリテラシー向上に繋がり、競技者レベルの向上に繋がり、球界の発展に繋がると考えています。

私がデータを公開することで微力ながら「データの民主化」が進めばと思い、データを見やすく整理して公開することにしました。

ちなみに社会人野球では、都市対抗中継では回転数を表示していますし、こちらでは一部データを公開しています。

素晴らしい試みですね。

このようにデータ公開がどんどん進めばいいなと、いち野球ファンとして感じています。

ドラフトグレードの使い方

本ツールの使い方を解説します。

データ一覧

トップ画面は特に説明は不要かと思いますが、一点だけ。

上の画像の赤枠ですが、all_gradeがその選手の総合評価になっています。pitch_gradeは各球種の評価です。

all_gradeは各球種データで見れませんので、左下の球種を「総合」にしていただくと、出てきます。

球種を「総合」にすると、自動で他の球種選択は解除されますのでご注意ください。

その後、「総合」以外をチェックすると、「総合」から自動でチェックが外れます。

総合評価や各球種の評価の解説は別途説明します。

なお、トップ画面の表の選手名を選択すると選手個別のデータをチェックできます。

気になる選手や見たい選手がいたらチェックしてみましょう。

選手個別データ

こっちは書きたいことが多々あります。長いですがお付き合いください。

タブの切り替え

データは「球種別データ」「球質評価」「総合データ」「動画」の4つに分かれています。

下記画像の赤枠の部分の「タブ」で切り替えが可能になっています。

黒字が現在選択しているタブ、青字が選択可能なタブです。

まずは「球種別データ」の内容を説明します。

先発 or リリーフ

一番左上は先発かリリーフどちらかになっています。

私が撮影した時の球数が50球以上の場合は先発、50球未満はリリーフとしています。

ショートイニングであれば短いイニングなので、球速や回転数が上がることで球質レベルが向上しやすくなります。

反対にロングイニングだと出力を抑えて長いイニングを投げ切ろうとします。

なので、参考までに先発かリリーフかで区分けしています。

リリーフでこのくらいのデータだから先発は厳しいだろうなとか、先発だと厳しいがリリーフなら活躍レベルに届くかな?とか、のように参考にして頂くのが良いでしょう。

球種切替

球種別データタブでは球種切替が可能です。

下記の赤枠を選択すると、その選手の持ち球が出てきます。

球種を選択すると、データが切り替わりますので、見たい球種を選択しましょう

有効回転数

赤枠の有効回転数は回転数×回転効率です。

有効回転数は変化量に影響しています。

有効回転数について詳しく知りたい方はこちらをご参照ください。

回転軸

回転軸を回転方向とGyro(ジャイロ)角度で表しています。

回転方向はそのままの意味で、回転している方向を表し、ボールが変化する方向に影響します。

0時がバックスピン、6時がトップスピンで、角度を時計で表すのが主流になっています。

回転方向について詳しく知りたい方はこちらをご参照ください。

Gyro角度は先ほどの有効回転数の解説をご参照ください。

縫い目位置(シームオリエンテーション)

縫い目位置は「シームオリエンテーション」と呼ばれており、回転軸に対する縫い目の位置を表します。

縫い目の位置は変化量に影響してきます。

縫い目の位置とシームの関係は下記になっています。

  • 緯度が0度、経度が0度 → 4シーム
  • 緯度が0度、経度が90度 → 2シーム
  • 緯度が45度、経度が90度 → 1シーム

この値によって変化量が変わってきますが、その変化量への影響をシーム・シフト・ウェイク、略してSSWと呼ばれています。

SSWに詳しく知りたい方はこちらをご参照ください。

変化量

変化量はその名の通り、ボールが変化する量を表します。

横変化量0cm、縦変化量0cmがボールの回転の影響を受けなかった場合のボール軌道です。

物理学でいうと水平投射に近い軌道で、重力による自由落下をする軌道です。水平投射はこちらが参考になります。

そのボールと比較して回転によって

  • どれだけ落下しなかったか? → 縦変化量 or ホップ量
  • どれだけ横に曲がったか? → 横変化量

という定義です。

縦変化量がプラスでも直線軌道に比べれば落下しています。

本ツールでは変化量は「MG」+「SSW」=「TOTAL」として算出しています。

MG(マグヌス力)は回転による変化量で、SSWは先ほど説明した通り縫い目の影響による変化量です。

この2つを足し合わせてTOTAL変化量として表現しています。

上の画像の選手は縫い目の位置が4シームに近く(ズレが少ない)、ホップ量を上乗せするようなSSWとなっています。

対して下の画像の選手は縫い目のズレが大きく、SSWでホップ量を上乗せすることが出来ていません。

MGでは最初の画像の選手よりも勝っているのに、有効なSSWを得られないことでホップ量は同等レベルになっています。

こういう選手を見ると「勿体ないな」と思う反面、ちょとした改善で大幅に良くなる可能性もあるので、逆に狙い目の選手と言えるかもしれません。

球質評価

続いて「球質評価」タブの内容を説明します。

この「球質評価」タブは、球種別データタブで選択した球種の評価になっています。

球種を切り替える際は球種別データタブに戻って球種を切り替える必要があります。(良いUIとは言えませんね、、、)

球質評価

まず赤枠の球質評価の方を説明します。

一番下のstuff+は球質のトータル評価値の事で、stuff+は高ければ高いほど優秀なボールという事です。

このstuff+という指標ですが、MLB全球団それぞれが独自の評価システムを構築し、運用していると米国の記事で読んだことがあります。

本ツールでは、stuff+の単位を偏差値(grade)で表現し、私が計測したドラフト指名済選手で球種別に偏差値化(grade化)した値をグラフ化しています。

日本人は偏差値に慣れているので、偏差値化して表現することにしました。

偏差値を詳しく知りたい方はこちらをご参照ください。

その他は

  • Whiff% → スイングの際の空振り率
  • FB% → フライ確率
  • GB% → ゴロ確率
  • HardHit% → 95マイル(153km/h)以上の打球確率

となっています。

上記を含めた様々な打撃結果確率を積み上げて算出したのがstuff+です。

これらの数値が出ることで、評価の根拠がわかるだけでなく、ボールの特徴も見えてきます。

画像の選手のボールのstuff+は偏差値77なので、私が計測してきたドラフト指名済選手の中でも最上位に位置しているということがわかります。

注意点として、評価は球種別に算出しているので、別球種間で直接的にgradeを比較することはできません。

4シームとスライダーのgradeが同じでも抑えやすさは同等ではないという事です。

球質影響

下記は球質への影響を表しています。

この選手のこのボールの何が良いのか?を表現したいなと思いチャレンジしてみました。

算出方法はいたってシンプルで、球速の場合を例にすると下記になります。

「元のstuff+と球速だけ平均値にした場合のstuff+のgrade差」

画像の選手は球速でマイナス評価が出ています。

球速が平均よりも遅いのでその分評価が悪くなっているという事がわかります。

対して、縦変化量で大幅なプラスになっており、ノビのあるボールが評価を大幅に押し上げるほど優れている、という事がわかります。

総合データ

次は「総合データ」タブです。

これまでは球種別にデータを見てきましたが、ここでは総合的な評価を確認できます。

左は各球種の変化量マップ、右は各球種のgradeと総合値です。

総合値は各球種の評価を各球種の投球割合で積み上げた評価を偏差値化しています。

この選手の総合値は偏差値61.5なので、優秀な投手である事がわかります。

動画

次は「動画」タブです。

ここでは選択選手のリリースの動画を確認できます。

なお、主催の連盟によって動画投稿NGの場合がありますので、公開できない選手がいることはご了承ください。

注意点

最初にお伝えしておきたいのは本ツールがβ版ということです。

今後も改善や修正を続け、正式版をリリースできればと思っています。

β版の理由を説明しておきます。

変化量推定アルゴリズム

1つは変化量推定アルゴリズムです。

今のアルゴリズムは回転ベースの変化量と縫い目の影響による変化量を組み合わせて変化量推定を行っていますが、縫い目の影響による変化量推定は完全ではありません。

推定に必要なデータ数がまだまだ少なく、データが少ない部分の推定には改善の余地があります。

現在進行形でデータ数を増やす活動は続けていますが、少ないデータでも高精度を実現できる仕組みができないかを模索しています。

データ数は時間を掛ければ集められますが、膨大な時間が必要なので、まずはβ版でリリースします。

球速データ

球質評価には球速データも使っていますが、球速データは私が撮影した時の球場のスピードガン表示を参考にしています。

球場によっては速め・遅めの傾向があり、公平性に欠ける部分がどうしても出てきます。

その為、私の球速データとNPB入り後の球速データの差が大きい場合、NPB入り後の球速データを反映させたり、別日の試合の球速を使ったりなどの調整をしている選手もいます。

公平性を保つならスピードガンを購入するという選択もあるのですが、費用的に厳しいです、、、、

MLBデータ

冒頭でも書きましたが、変化量推定と打撃結果予測はMLBデータから作成した機械学習モデルから算出しています。

変化量はアマチュア球やNPBボールと大きく違っています。違いはこちらで紹介しています。

打撃結果予測もMLBとNPBでは傾向が違う場合もあるかもしれません。

なので、本ツールはあくまでも参考程度に見て頂ければと思います。

制球力

本ツールは球質に特化しており制球力については全く触れていませんが、結果を残すためには制球力は非常に重要です。

打撃結果を予測する機械学習モデルでは、各変数の重要度が計算できます。

その重要度を計算すると、打撃結果予測をする際に最も重要なのは投球コースという結果になっています。

だいぶ前にWhiff%(スイング時の空振り率)予測の重要度を投稿していたので参考までに貼っておきます。

空振りを奪えるかどうかは投球高さの影響が一番大きい結果になっており、それだけ投球コースが重要という事です。

なので、球質が良くない選手でも制球力があれば結果を残せるケースは多くあります。

ただ、制球は常に安定させるのは難しいので、それを補うのが球質という位置づけで良いのかなと思います。

web技術

ツールの内容とは直接的に関係ありませんが、本ツールは全て私一人で作成しています。

元々、WEB技術はHTMLやCSSをほんの少し読めるくらいのレベルでしたが、本ツールを作成するためにPythonやSQLなどの勉強をしてコツコツ作り上げてきました。

なのでスマホ閲覧時の表示が最適化されてなかったり、バグや設定が抜けていたりと、問題点が多々あると思います。

また、維持コストを少なくするため、サーバースペックが低くなっています。

アクセス数によっては重くなったりする場合も出てくるかもしれません。

なにか問題点などあれば、お問合せ or TwitterのDM or コメント欄まで情報を共有して頂けますと幸いです。

引用・転載について

こちらをご参照ください

基本的に引用・転載する際は法律に準拠して頂くこと、必ず本ツールへのリンクを入れて頂くことを条件としています。

ルールさえ守っていただければ、事前のご連絡などは不要です。

最後に

以上が本ツールについてでした。

2019年からスロー撮影を始め、現時点までに非常に多くのドラフト候補選手を撮影してきました。

そのデータを少しでも野球界のために生かせればという思いでツール作成と公開に踏み切りました。

少しでもご参考になれば幸いです。

>>ドラフトグレードはこちら

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